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東京地方裁判所 昭和48年(ワ)964号 判決

原告 林義雄

原告 林敬之助

右両名訴訟代理人弁護士 杉本良三

青木二郎

被告 入江二郎

右訴訟代理人弁護士 降巻雄

被告 国

右代表者法務大臣 稲葉修

右指定代理人 森脇勝

〈ほか二名〉

主文

被告らは各自、原告義雄に対し金一七三、七八〇円、原告敬之助に対し金六五八、五六〇円及び右各金員に対する昭和五一年三月一二日以降完済に至るまで、年五分の割合の金員の支払をせよ。

原告らのその余の請求を棄却する。

訴訟費用は五分し、その一を被告ら、その余を原告らの負担とする。

本判決は原告ら勝訴部分につき仮に執行することができる。ただし、被告らにおいて、原告義雄に対し一〇万円、原告敬之助に対し三〇万円の担保を供したときは、それぞれの原告の仮執行を免れることができる。

事実

原告代理人は、「被告らは各自、原告義雄に対し金二〇〇万円、原告敬之助に対し金二〇〇万円及びこれらに対する本件口頭弁論終結の日の翌日から支払ずみに至るまで、年五分の割合の金員を支払え。訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決および仮執行の宣言を求める旨申し立て、その請求の原因として、

一  原告義雄は別紙物件目録(一)の土地(以下本件第一土地という。)を、原告敬之助は同(二)の土地(以下本件第二土地という。)を、それぞれ昭和三五年一二月七日訴外株式会社千葉不動産(代表取締役被告入江)から買い受けた。そして、右買受にともなう所有権移転登記手続は、右訴外会社の分譲地の登記手続を扱っていた司法書士駒崎法純によってなされたが、原告らが売買代金を完済したのと引換に、右訴外会社から原告らに対し昭和三六年六月三〇日頃、本件第一土地につき千葉地方法務局野田出張所昭和三五年一二月八日受付第二七八五号、本件第二土地につき同出張所同日受付第二七八六号の登記済受付印の押捺された各登記済証が交付された。

二  しかし、このように原告らに対し各買受地につき登記済権利証が交付されたのに拘らず、本件第一、第二土地については、原告らのために所有権移転登記がなされず、第一土地につき、昭和三六年一〇月二〇日同出張所受付第三二九四号をもって右訴外会社から三和宅地開発株式会社(代表者被告入江)に贈与を原因として所有権移転登記、その後転々譲渡されて昭和四三年九月二五日付をもって宮本栄に所有権移転登記、第二土地につき、昭和四一年一二月五日同出張所受付第六〇七二号をもって東京国税局(大蔵省)の差押登記がなされ、ついで昭和四二年八月七日同出張所受付第五〇六四号をもって若宮京(のちに若松京と登記名義人の表示変更)に公売処分による売却決定を原因とする所有権移転登記がそれぞれ経由された。

三  原告らは、前記のとおり第一、第二土地の所有権を売買により取得し、真正なる登記済権利証を有するにも拘らず、これに応じた登記が実際にはされず、右のように、第三者が同一土地を取得して登記を経由してしまったため、原告らの売買契約は履行不能となり、結局原告らは本件第一、第二土地を取得することができなくなり、これによって後記の損害を被った。

四(一)  千葉地方法務局野田出張所の登記官は、前記一に記載のとおり、株式会社千葉不動産から原告義雄への所有権移転登記申請、同会社から原告敬之助への所有権移転登記申請を受け付け、各登記済権利証を発行しておきながら、その旨の登記簿への記入をすべき義務を怠ったものであり、原告らが被った損害は、登記官のこの過失に起因するものであり、そして登記官は被告国の公権力の行使にあたる公務員であるから、被告国は、原告らに対し、国家賠償法一条により右損害の賠償をすべき義務がある。

(二)  被告入江は、昭和三五年当時、宅地の分譲を主たる業務としていた株式会社千葉不動産の代表取締役であり、右会社を代表して原告らと売買契約をしたが、右売買契約においては、明示的ないし黙示的に右会社は売主として買主である原告らに対し所有権移転登記手続を完了すべき義務を負っていた。かりにそうでないとしても、右会社は原告らに対し所有権移転登記手続を完了すべき事実たる慣習がある。いずれの場合にも、右義務の内容は、登記申請の代行のほか、すみやかに登記簿を閲覧、謄写して申請どおり登記がなされたかを確認することをも含み、このように買主のために所有権移転登記が完全になされるように注意すべき義務がある。少なくとも、一度買主に売却した土地については、登記官の過失により登記がなされなかったとしても、更に二重に第三者に譲渡することのないように注意すべき義務を負っている。然るに、被告入江は、右義務を尽さず、原告らのため所有権移転登記がされていることを確認しないばかりか、原告らに売却しておきながら、本件第一土地を三和宅地開発株式会社に贈与し、本件第二土地につき東京国税局の差押を許し、公売処分により若松京に所有権を取得させてしまったことは前記のとおりである。このような被告入江の行為ないし態度は、株式会社千葉不動産の取締役として、右会社の職務を行うにつき悪意又は重大な過失があるものというべく、被告入江のこの行為が登記官の過失ある行為とあいまって、原告らに損害を生ぜしめたものであるから、同被告は原告らに対し、商法二六六条ノ三、民法七〇九条により損害を賠償すべき義務がある。同被告は、本件売買契約の締結および原告らの所有権取得を不能にしたことにつき直接かつ積極的に関与したものであるが、かりにこの点が認められないとしても、同被告は株式会社千葉不動産の代表取締役であり、同会社は資本金五〇万円、従業員数人の同被告の個人企業的会社であり、同被告は代表取締役としてその業務全般に直接関与し、被用者の選任監督をしていたのであるから、同被告は原告らに対し、民法七一五条二項により損害を賠償すべき義務がある。

五(一)  原告らは、それぞれ第一土地又は第二土地の所有権を履行不能によって取得することができなくなったことにより、時価相当の損害を被った。その時価は、本件口頭弁論終結時又はそれに接着する時点を基準にしてきめられるべきであり、その価格はそれぞれ金一、七一二、四三六円である。株式会社千葉不動産及びその代表者である被告入江は、右履行不能当時、本件第一、第二土地付近の土地の価格が騰貴している事情を知っていたか、又はこれを予見することができる状況にあったものである。従って、同被告は履行不能後騰貴した右価格を基準とした損害額を賠償すべきであり、これが同被告の行為と相当と認められる額の範囲内であり、相当因果関係に立つ損害であるといえる。同様に、千葉地方法務局野田出張所登記官においても、右履行不能当時において、本件第一、第二土地付近の土地の価格が騰貴している事情を知っていたか、又はこれを予見することができる状況にあったものというべきである。従って、被告国もまた履行不能後騰貴した右価格を基準とした損害額を賠償すべきであり、これが同登記官の行為と相当と認められる額の範囲内であり、相当因果関係に立つ損害であるといえる。

(二)  原告らは、本件訴訟の遂行を本件訴訟代理人である弁護士杉本良三、青木二郎に委任し、着手金として、原告ら各自二〇万円を支払い、かつ成功報酬につき認容額の一割を支払うことを約した。従って、原告らは各自、弁護士費用として、着手金二〇万円、成功報酬のうち少なくとも一〇万円合計三〇万円の損害を受け、これは被告入江、被告国の登記官の前記行為と相当因果関係にあるものである。被告入江と被告国の原告らに対する損害賠償債務は、不真正連帯債務関係にある。

そこで、原告らは被告らに対し、各自右(一)(二)の合計金二、〇一二、四三六円のうち金二〇〇万円及びこれに対する本件口頭弁論終結の日の翌日から支払ずみに至るまで、民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める、と述べ、後記被告らの過失相殺の主張に対し、原告らに過失あることを否認する。本件第一、第二土地の買主である原告らが、所有権移転登記が完了していることを調査確認すべき義務はない。登記官から買主たる原告らに対し、登記済権利証が交付された以上、そこに記載されているような登記がなされたと原告らが信ずるのは当然であり、登記簿を確認しなかったからとて過失があることにはならない、と述べた。

被告入江代理人は、請求棄却を申し立て、請求原因に対する答弁として、請求原因一、二は認め、三、四、五は争う。被告入江は株式会社千葉不動産の代表取締役として行動したものであり、機関個人として責任を負うべきいわれはない。右会社が原告らに対し、本件第一、第二土地を売却するについては、当事者立会のうえ、双方の代理人である司法書士駒崎法純が、売買に基づく所有権移転登記の申請手続を前記野田出張所に対してなし、登記済権利証が原告らにそれぞれ交付されたのであるから、本件第一、第二土地の売買契約は、これによって完結したものである。右登記済権利証を発行しながら、登記官が登記をしなかったものであるとしても、被告国の責任が問題とされるべきであり、売主たる右会社に責任はなく、原告らの損害の発生につき被告入江は関係がない。本件第一土地につき右会社が三和宅地開発株式会社に贈与による所有権移転登記をした事情は次のとおりである。株式会社千葉不動産は、昭和三六年当時事業は順調であったが、同年八月一五日三和宅地開発株式会社を設立して、これに営業を全部承継させることとし、株式会社千葉不動産は解散した。解散当時右会社は国税を約四〇〇〇万円納入したが、その後なお未納分があるとして、これを三和宅地開発株式会社が納入するよう、かつ、右承継後は、株式会社千葉不動産の所有名義となっている不動産を三和宅地開発株式会社に名義変更するよう、税務当局から強く求められ、やむなく、その指示どおりに各名義変更をしたものである。また、本件第二土地は、株式会社千葉不動産が野田梅里分譲地として分譲した土地の一部であるが、右会社が解散した当時右分譲地には売れ残りがあり、本件第二土地は登記簿上右会社名義になっていたため、税務当局が本件第二土地を含め、右売れ残り土地に滞納処分として差押をするに至ったものである。従って、被告入江は右会社の業務遂行中において、任務を懈怠したことも、重大な過失を犯したこともない。かりに被告入江に損害賠償義務があるとしても、その賠償すべき損害の額の算定時は、株式会社千葉不動産から原告らへの所有権移転登記が前記野田出張所によって受理された昭和三五年一二月八日である。この時が基準にならないとしても、本件第一土地につき右会社から三和宅地開発株式会社に所有権移転登記がなされた昭和三六年一〇月二〇日、本件第二土地につき東京国税局のため差押登記がなされた昭和四二年一二月五日である。その後の時点を基準として値上り分を含めて損害額とする原告の主張は、前記の時点で算定される額をこえる範囲につき被告入江の行為との間に因果関係はなく、同被告はこれにつき賠償責任を負わない、と述べ、被告入江の主張として、原告らは本件第一、第二土地を買受後一二年近くも不動産取得税、固定資産税の納税をすべきであるのに拘らずこれを等閑し、それらの通知が来ない理由を調査することなく、その間登記簿も閲覧しなかった。これらは原告らの過失であり、この過失ある行為により、原告らは登記簿に原告らに対する所有権移転登記がなされていなかった事実を発見することがおくれ、これによって所有権の取得ができなくなり、ないしは損害が、徒らに増加させられた。従って、損害額から相当の過失相殺がなされるべきである、と主張した。

被告国代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、本判決に仮執行宣言が付されたときは、担保を条件とする執行免脱宣言を求め、請求の原因に対する答弁として、請求原因一のうち本件第一、第二土地の登記済権利証が原告らにそれぞれ交付されたことは認め、その余は不知、同二、三は認め、同四(一)は認め、同五(一)(二)は争う。登記官の不法行為時である昭和三五年頃の本件第一、第二土地付近は松林を主として水田が介在し、道路らしい道路もなく、地価も安かった。ところが、昭和四二、三年時における国道一六号線用地の買収が一気に地価の急上昇に動因を与えたが、これは特別事情というべきである。ところで、登記官は、不法行為時において右の特別事情を予見することができなかったものである。従って、登記官の本件過失行為によって被告国が原告らに賠償すべき損害額は、不法行為時の本件第一、第二土地の時価というべきである。かりに右不法行為後の通常の地価の上昇は不法行為と相当因果関係にあるとしても、国道一六号線用地買収による地価の急上昇は右不法行為時予見することは不可能であった。右不法行為による原告らの損害は、本件第一、第二土地につき第三者に移転登記がなされた時に現実化するから、その時を基準とし、その時における本件第一、第二土地の価格相当額をもって損害額と解すべきである。従って、本件第一土地については、三和宅地開発株式会社に所有権移転登記がなされた昭和三六年一〇月二〇日、本件第二土地については、若松京に所有権移転登記がなされた昭和四二年八月七日が基準となる。この基準時における価格相当額は、本件第一土地につき金一五三、七八〇円、本件第二土地につき金六〇八、五六〇円である、と述べ、被告国の主張として、前記被告入江と同様の過失相殺の主張をした。

≪証拠関係省略≫

理由

一  原告らと被告入江との間において、請求原因一、二の事実は争いなく、同三の事実については、右争いない事実及び≪証拠省略≫を総合して認めることができる。

原告らと被告国との間においては、請求原因一のうち本件第一、第二土地の登記済権利証が原告らにそれぞれ交付されたことは争いなく、同一の事実のうちその余の事実は、≪証拠省略≫を総合して認めることができ、同二、三の事実は当事者間で争いない。

そうすれば、昭和三五年一二月七日、原告義雄は株式会社千葉不動産から本件第一土地を、原告敬之助は同会社から本件第二土地を買い受け、代金の支払を了し、これが各売買につき、千葉地方法務局野田出張所から所有権移転登記ずみの登記済権利証の交付を受けたにも拘らず、実際には登記官が申請に基づく売買による所有権移転登記をしなかったところ、本件第一土地については、右会社から三和宅地開発株式会社に贈与がされて同三六年一〇月二〇日付をもって所有権移転登記がなされ(その後更に転々譲渡されて所有権移転登記がされている。)、本件第二土地については、昭和四一年一二月五日付をもって東京国税局(大蔵省)の差押登記、ついで昭和四二年八月七日付をもって若松京に所有権移転登記がされたのであるから、本件第一土地については、昭和三六年一〇月二〇日の三和宅地開発株式会社への所有権移転登記、本件第二土地については、昭和四二年八月七日の若松京への所有権移転登記のなされたことにより、原告らは本件第一、第二土地を取得することができなくなったものというべきである。

二  ところで、原告らが本件第一、第二土地を取得できなくなったのは、登記官が原告らへの前記所有権移転登記申請を受理し、登記済権利証を原告らに交付しておきながら、登記簿への所有権移転登記を記入しなかったことによるものであり、これは国の公権力の行使にあたる登記官が、その職務を行うについて過失により違法に原告らに損害を加えたものというべきであるから、被告国はこれが損害を賠償すべき義務がある。

被告入江が、原告らと株式会社千葉不動産との間で本件第一、第二土地の売買契約がなされた当時、同会社の代表取締役であったことは、同被告の認めるところであり、同被告が右売買の実際の手続を同会社を代表してしたものであることは、≪証拠省略≫によって認めることができるから、被告入江は、同会社の代表者として、いったん原告らに売却した本件第一、第二土地については、登記官の過誤ある行為により原告らに所有権移転登記がなされず、登記簿上同会社の所有名義になっていても、売主として買主に対し完全な所有権を取得させる義務があるから、これを第三者に譲渡すべきではなく、また譲渡のきっかけとなる差押に対しては、事実関係を差押債権者(東京国税局)に説明し、ないしは原告敬之助に差押にきたことを告知すべき義務を売主の代表者として負っているものと解するのが相当である。しかるに、被告入江は右会社の代表者としてその職務を行うにつき、本件第一土地を三和宅地開発株式会社に贈与を原因として所有権移転登記をし、それから更に右土地は転々譲渡され、昭和四三年九月二五日付をもって宮本栄所有名義の登記がされていることは前記のとおりであり、本件第二土地については、東京国税局の差押に対し、事実関係を差押債権者である東京国税局に説明したり、あるいは原告敬之助に差押のされた事実を告知したりしたことのないことは、弁論の全趣旨によって認めることができる。そうすれば、被告入江は、株式会社千葉不動産の取締役として、その職務を行うにつき、悪意又は重大な過失があるものというべく、これにより原告らは、本件第一、第二土地の所有権を取得することができず、損害を被ったのであるから、同被告は原告らに対し、損害を賠償すべきである。

被告入江は、本件第一土地を三和宅地開発株式会社に所有権移転登記した事情及び本件第二土地につき東京国税局から差押を受けた事情につき前記のとおり(本判決の事実欄の被告入江代理人の主張部分参照)主張するが、かりにこのような事実が存在したとしても、被告入江の原告らに対する右に述べた損害賠償責任を免れさせる理由とはならない。

三  そこで、被告らが賠償すべき損害の額について判断する。

被告入江が原告らに対して賠償すべき損害の範囲は、同被告の悪意又は重大な過失ある行為と相当因果関係にある損害であり、被告国が原告らに対して賠償すべき損害の範囲は、本件登記官の過失ある行為と相当因果関係にある損害であり、右両損害は、本件第一、第二土地につき第三者に所有権移転登記がなされた時に現実化するのであるから、その時を基準とする本件第一、第二土地の価格相当額をもって、右相当因果関係にある損害というべきである。本件第一土地を原告義雄が取得できなかったことによる右損害の基準時は、前記の昭和三六年一〇月二〇日であり、本件第二土地を原告敬之助が取得できなかったことによる損害の基準時は、前記の昭和四二年八月七日である。右基準時における価格相当額がそれぞれ、金一五三、七八〇円、六〇八、五六〇円〔坪当り、故に総額15,214×40=608,560円〕であることは、≪証拠省略≫に徴し認められる。

原告代理人は、被告入江、前記登記官は、右基準時(本件売買契約の履行不能当時)本件第一、第二土地の価格が騰貴している事情を知っていたか、又はこれを予見することができる状況にあったから、その後の騰貴した価格を基準とした損害額を賠償すべきであり、この額が被告入江、前記登記官の行為と相当と認められる額の範囲内であり、相当因果関係に立つ損害であると主張し、≪証拠省略≫中にはこれにそう部分があるが、これらは≪証拠省略≫に徴し措信できず、その他には、原告らの右主張を認めるに足りる証拠はない。

原告らは、それぞれ本件訴訟の遂行を本件訴訟代理人である弁護士杉本良三、青木二郎に委任し、着手金として金二〇万円を支払い、成功報酬として認容額の一割を支払うことを約したことは、≪証拠省略≫により認めることができるが、原告らの被った右の損害のうち原告義雄の分につき二万円、原告敬之助の分のうち五万円が被告入江及び前記登記官の行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。

原告らの被った前記すべての損害についての被告入江及び被告国の賠償債務は、不真正連帯債務と解するのが相当である。被告ら主張の過失相殺については、これを認めるに足りる証拠はないから、この主張は採用しない。

四  よって、原告義雄の請求中被告両名に対しそれぞれ金一七三、七八〇円(被告両名の不真正連帯債務)、原告敬之助の請求中被告両名に対しそれぞれ六五八、五六〇円(被告両名の不真正連帯債務)及び右各金員に対する本件口頭弁論終結の日の翌日であることが当裁判所に顕著な昭和五一年三月一二日以降完済に至るまで民法所定年五分の遅延損害金の支払を求める部分は理由があるから、これを認容し、その余の部分は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行宣言につき同法一九六条一項、免脱宣言につき同条三項を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 鈴木重信)

〈以下省略〉

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